だが、規模の小さな小売業者ほど「3分の1」から「2分の1」への切り替えは難しいのが実情だという。
1日の来店客数も1人あたりの販売点数も少ないため、賞味期限切れ商品が出やすくなるからだ。企業の社会的責任に対する考え方も大手とは異なる店舗が少なくない。
それでも今回の物価高を機に、納品期限の緩和や食品ロス削減は進む、と石川さんは見ている。
「物価高のなか、食品ロスを出すことは、これまで以上に社会の反発を招きやすくなっています。そうした社会的圧力に押される形で納品期限の緩和はさらに進んでいくと思います」
■小幅値引きの効果
そのための切り札の一つが「小幅な値引き」だという。
「見切り品を単に値引き表示に切り替えて販売するのではなく、企業のSDGs推進戦略の一環として、『食品ロス削減につながります』と前面にアピールして売り出す店舗も増えています。消費者の意識も変化しており、新鮮な商品を提供するサービスだけでなく、賞味期限が迫っていても安く買えるサービスを求める消費者も増えています。商品を厳密に管理し、鮮度に応じて小幅に値引きする仕組みを確立すれば、売り上げ増にもつながると思います」(石川さん)
スーパーの「オーケー」では約20年前から、毎日納品される商品の場合、前日納品した賞味期限が1日短い商品には3%の値引きシールを貼っている。このシステムを導入後、商品回転率が向上し、食品ロスも大幅に減ったという。
石川さんは言う。
「景気変動に最も敏感に反映されやすいのが食品価格です。価格高騰で客離れや買い控えを起こされたくない小売店は、あの手この手を使って商品を売るアイデアを繰り出す局面に入っています。効率よく売りさばくための努力が食品ロス削減や納品期限の緩和にもつながっていくはずです」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2022年12月26日号