数々の恋愛小説を生み出している著者は、2016年に刊行した『ぼくが発達障害だからできたこと』で自身について幼少期からの記憶をたどり考察した。今作はその「副読本」として、著者の一日の過ごし方を私小説と銘打ち描き出す。

 主人公の繊細な神経に驚く。食品添加物やカフェインの刺激で必ず起きる体調不良。肌着の締めつけは厳禁、匂いが体調に影響するので新しいパジャマをいつおろすかまで検討する。生活のすべての事柄にあらゆる吟味が必要なのだ。「ぼくの肉体や神経は油断ならぬ敵」という著者だが、自身の潔癖から生み出される純粋な物語は、暴力に満ちたこの世界とのバランスをとっているのだと語る。

 著者の見ている世界は澄んでいて、「発達障害」という言葉からは知り得ない豊かさがあった。

週刊朝日  2018年4月27日号