AERA2022年12月26日号
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■一歩を踏み出す勇気

 ダンスを始め、俳優を始め、いろいろな活動をしていく中で、芸術性が大切な分野であえて自分を固める必要はないと感じたことも大きいと思います。自由な感性と自由な発想で表現する方がいいんだなと思えたんです。

 元々の性格からすると、もしかしたら僕は芸術に触れるようなタイプではなかったかもしれない。でも、実際に触れてみて、面白そうだと思いましたし、強く惹かれるものがありました。この世界で成長していくには、自分のこだわりよりも広い世界があると感じて、柔軟性を意識し始めたのかもしれません。

 ただ、それを意識しすぎて、「これは凝り固まった見方になってしまってるんじゃないか」と自分を疑ってかかるのも結構ストレスがたまります(笑)。そろそろ、柔軟性を意識することを外してもいいかなとも思っています。

——ひたすら突き進んだ2022年。自分に対し、どんな言葉をかけたいと思うか。

 頑張ったなと思いますし、考え方や感じ方を変えればもっと楽になる部分もあると思います。

 以前は、「寝る時間が少なくてもいいので仕事がしたいです」と言っていたんですが、30歳を前にしたあたりで、自分のことをないがしろにしすぎるのも良くないと感じ始めました。いまは、自分から「休みます!」と言います。ちゃんと休むときは休んだ方がいいし、それを言える環境がよいですよね。みんな人間だから、頑張れるときもあれば、頑張れないときもあるでしょう。無理だと思ったらそれを素直に言って、周囲が補い合えたらいいなと思います。

 たとえば食事の誘いがあって、翌朝早くから仕事があるとするなら、はっきりとそれを伝えてお断りした方が、お互い気持ちいいと思うんです。それで関係が壊れてしまうとしたら、それまでの縁だと思うのもひとつの選択肢。自分の感覚を信じて、勇気を持って踏み出すことが大切なんじゃないかな、と思うようになりました。

 来年も地道に頑張りたいです。作品を見てくれた方に少しでもポジティブな気持ちを持ってもらえるよう、丁寧に演じていけたらいいなと思っています。

(ライター・小松香里)

AERA 2022年12月26日号