■今の時代生きるヒント
——演じるのは侍への強いあこがれを抱く農民、イチだ。
町田:現代とは違い、生まれで立場が決まってしまっていた時代ですから、圧倒的な身分の差は変えられない。でも、その身分を飛び越えて、例えば農民が武士になれるとしたら、どんな気持ちになるのか。演じるうえで、自分の今の環境の自由さを感じる一方で、今でも一個人ではどうしても変えられないものがあるということも考えました。ただ、アクションを起こしたら何かが変わるかもしれない。そういったエネルギーをもらえる作品だと感じました。
時代劇で描かれている今にはない感覚を知ることによって、今の時代を生きる上でのヒントが生まれることもあります。忘れかけているものを教えてくれたり、失われてよかったと思うことを感じさせたり。先人たちが築いてきたことを知ることは大きな学びになりますよね。
——多くの作品に出演し続けている。自身の強みを尋ねると、しばらく悩んだ末に、「何があるんでしょう(笑)。100歳ぐらいまでにわかればいいのかもしれない」と笑った。
町田:作品はよくジャンル分けされますが、僕にとってはすべてが違う作品です。演じる人物も、以前演じた人物と似ている性質を持っている人物はいますが、違う人間である以上、全部が違う。同じ血液型の人はいるけれど、同じ人間はいないのと一緒です。だから、「演じやすい」と思う役はないんです。僕にできるのは、台本を深く読み込んで、キャラクターの細部をつかむこと。自分自身が興味を持って演じられるように臨んでいます。
■自分は頑固だから
——器用に多彩な役を演じているように見えるが、「考えは凝り固まってしまうほうだから、柔軟であるよう心がけている」という。
町田:昔から自分は頑固だし、そういうタイプだとは気づいていたのですが、やっぱり頑固なので、そこは認めたくなかったんだと思います(笑)。でも、そのせいで「もったいなかったな」と思うことが多くありました。アンテナを張っていろいろなことを感じ、吸収できた方がいい。一方で、芯はぶれずに取り組んだ方がいい場合もあるので、どちらもできるように「柔軟であれ」と自分に言い聞かせているのかもしれません。
子どもの頃の僕は広く浅くいろいろなことをやるタイプでした。何かに興味を持つと、誰が何と言おうと「これをやる!」と言い、「え?」と言われるともっとやりたくなる。そんな頑固な自分を好きに泳がせてくれた両親には感謝しています。「いつか自分で気づくだろう」と思っていたのかもしれませんが(笑)。