「維新の三傑」と呼ばれながらも、西南戦争で賊臣となった西郷隆盛。幕末明治の偉人ながら、彼ほど実像がわかりにくい人物はいないだろう。国内外70人以上の政治家、作家などの西郷論を紹介する。

 西郷については「人望は絶大だが、短絡的で政治的見識を持ち合わせていなかった」との見方が多い。ただ、福沢諭吉が「天下の人物である」とまで語っているように、明治の政治家の中でも長期的なビジョンを持ち、行動していたとの指摘も少なくない。

 興味深いのは大正時代以降、時代に利用され始めるところだ。左派からは歴史の進歩に抵抗する反動勢力のドンと酷評され、右派からは征韓論を唱えたことが英雄視される。

 果たして今年の大河ドラマではどのように描かれるのか。本書を読んでから見ると面白さが増すかも。

週刊朝日  2018年2月16日号

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