太平洋戦争下、米国で推定12万人の日系アメリカ人が強制収容された。本書では米政府の思惑や、日系アメリカ人たちの胸の内を公式文書や手紙から炙り出す。

「自由の国」を標榜していた当時の米国政府高官らの発言にひたすら驚かされる。反日感情を追い風に、ジャップはネズミだ、と声高に叫び、強制収容が憲法に抵触するならば憲法を変えればよいとまで言い切る。

 日系アメリカ人の中には反発する者もいたが、迫害を逃れるために白人以上に米国人としての誇りを持たざるをえなかった。米軍に志願し、米国兵として戦死した者も少なくない。収容されたことで、現在の資産価値で数千億円を失った彼らは、戦後も苦しい生活を送る。

 時代の空気がいかなる手段も正当化してしまう恐ろしさを教えてくれる一冊だ。

週刊朝日  2017年12月29日号