2015年の国勢調査で明らかになったように、日本の人口は減少に転じている。昨年は、年間出生数がはじめて100万人の大台を割りこんだ。このまま少子高齢化が続けば、40年後には9千万人を下回るというデータもある。すでに私たちは、世界史に類例のない急激な人口減少時代に突入したようだ。

 河合雅司の『未来の年表』は、その時代の悪夢のような実態を具体的に紹介する。第1部のタイトルにもなっている「人口減少カレンダー」には、2017年から2115年までに日本に起きる事象が時系列にまとめられている。

 たとえば東京オリンピックが開催される2020年には〈女性の過半数が50歳以上となり、出産可能な女性数が大きく減り始める〉。その翌年には〈団塊ジュニア世代が50代に突入し、介護離職が増え始める〉と続く。

 新聞記者で人口政策や社会保障政策を専門とする河合の予測には、どれもしっかりとした調査や数値の裏づけがある。それだけに、未来と呼ぶにはあまりに近い日本社会の変容に暗澹とする。若い女性が減るのに子どもが増えるはずがない。多くの企業が決して業績が良いわけではないのに求人に力を入れるのも、恒常的に勤労世代(20~64歳)が減り続ける近未来を知っているからだ。河合が名づけたとおり、人口減少とは「静かなる有事」なのだろう。

 では、どんな対策を打つのか。河合は第2部で、「日本を救う10の処方箋」を提示。かなり大胆なアイデアが並ぶが、その前提として〈戦略的に縮む〉とあるのは当然だと思う。縮みつつどんな社会をつくるか、私たちは巨大な銃口を突きつけられている。

週刊朝日  2017年8月11日号