落語家・春風亭一之輔さんが週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「人工知能(AI)」。
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『ChatGPT』。最強AI。聞けば何でも答えてくれるというアイツ。役に立つけど、ちょっとヤバいんじゃないかって恐れられてもいるアイツ。
開発者の話では「ChatGPTは日本人にとって『ドラえもん』のような存在になる」らしい。頼りになる『友達』なんだから、怖がらずに仲良くやろうよ!……ということらしい。まぁのび太だってドラえもんに全依存してるわけじゃないし、ドラえもんのアドバイスや小言をスルーしたり、逆らったりもしてる……ていうか、それで失敗するんですけどね、アイツ。
同じ藤子不二雄作品([A]先生)の『笑ゥせぇるすまん』では喪黒福造が迷える子羊に一度は夢を与えておいて最終的に「ドーーンッ!」。谷底へ突き落とす……流れとしては『ドラえもん』とほぼ同じだ。喪黒福造って『悪意のかたまりのドラえもん』だと思うのだが、前述の開発者は『笑ゥせぇるすまん』の存在は知ってるのだろうか?「ChatGPTはあなたのそばの『喪黒福造』」じゃ誰も寄りつかないから、わざと知らんぷりしてるのかも。ちょっと気をつけたい。
寄席の楽屋でもChatGPTにハマってる仲間が多い。「今日はどんな落語をやればいい?」と某先輩がChatGPTに聞いた。「お客様のニーズと季節感、そしてあなたの持つレパートリーから最適なものを選ぶのがいいでしょう(概略)」。「正論ぶちやがって!」と先輩。いやいや、それがコイツの仕事でしょ。「もっとチャレンジングなアドバイスすりゃいいのにな。『今日は芝浜一択!』とか『アドリブで新作落語を!』とか」「従わないでしょ?」「まーね」。せっかく答えてくれてるのに遊んでるだけ。こういう輩は無視していいぞ、ChatGPT。