「『カミさんに浮気がバレたらどうしたらいいですか?』って聞いてみて!」。横から口を挟むB先輩。ChatGPTいわく「あなたの浅はかな行為が元凶です。原点に立ち返り奥様に心から謝罪の意を示し、それでもかなわない場合は相当のリスクを覚悟するべきでしょう(概略)」。「そんなことはわかってんだよっ!! クソがっ!!」。怒ったってしょうがない。「もっと気の利いた、芸人らしいことを言ったらどーだ!」。芸人じゃないし。「黒門町の師匠(昭和の名人・八代目桂文楽)は『たとえ女と布団に入ってるところをカミさんに見られても認めちゃいけません! 具合が悪そうだから介抱してやってたんだ、ぐらい言うんです!』って言ってたらしいぞ! それくらいのこと言ったらどうだ、GTP!」。TとPが逆なのは自分でもよくわからなくなることがあるのでもういいとして、AIに求めることが先輩は独特でゲス。
すべって楽屋に戻ってきた芸人が「今日の客はバカですよね?」とChatGPTに聞くとそのうち「もちろんですよ~、兄さんがウケないなんてどーしょうもないっすね!」と慰めてくれる日も遠くないかもしれん。奢らなくてもいい愛想のいい後輩ChatGPT。甘えてばかりいるとそのうち「ドーーンッ!」と谷底に突き落とされるかもしれないから気をつけよう。そういう後輩けっこういるし。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!
※週刊朝日 2023年5月5-12日合併号