値上げの理由については、原材料価格の上昇がトップ(構成比92.7%)で、資源・燃料価格の上昇(同88.2%)、資材・包材価格の上昇(同72.5%)を挙げる企業も多い。原材料や資源・燃料の価格上昇は経済活動の本格的再開や、ウクライナ侵攻に伴う国際社会の分断、為替相場で進行した円安が大きく影響している。
だが、食品関連の値上がりには他の要因も大きく作用しているようだ。
同調査を担当した東京商工リサーチ情報本部情報部の二木章吉さんはこう述べる。
■食用油は26%値上げ
「原材料の卵不足がマヨネーズや練り物などのメーカーを直撃していますし、カタクチイワシやサバ、カツオ、のりも不漁による供給不足が深刻。その結果、調味料(出汁(だし))やサバ缶、のり製品などの値上げに結びついています。また、生乳の生産コスト上昇によって、バターやチーズ、菓子類の値上げも控えています」
冒頭でも触れたように、3月の物価上昇を最も牽引していたのが生鮮魚介。世界的なインフレの潮流のみならず、不漁というアクシデントが拍車をかけているわけだ。
一方、卵の値上がりについては鳥インフルエンザ流行に伴う大量殺処分で生産量が減ったうえ、飼料が高騰して二重苦となっている。三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主席研究員の小林真一郎さんは指摘する。
「国内の消費者物価は3%台の上昇にとどまっていますが、身近な品々が値上がりし、消費者の実感は実績値を大きく上回っているようです。日本銀行の『生活意識に関するアンケート調査』でも、3月における消費者の実感値は前年比プラス14.6%に達していました」
消費者の実感は、あながち的外れではないようだ。東京商工リサーチの調査によると、食品の中で最も高い値上がり率になっていたのは食用油で、26%にまで達していた。それに次ぐ冷凍食品は14.43%で、くしくも日銀アンケート調査と近似値。麺類(12.77%)、飲料・酒(12.39%)、大豆製品(12.07%)、調味料(11.77%)、菓子(10.79%)も2ケタの値上がり率となっている。