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●メディアへの警鐘と制作者の良心

 2月はドキュメンタリーに月間賞が集中した。そのうちの2本はメディアに対しての戒めを核に持つ番組である。独自に原発取材を続ける芸人夫婦を捉えたNNNドキュメント'17「お笑い芸人 VS.原発事故」(日本テレビ)は大手マスコミの取材のありようを突きつけ、映像'17「沖縄 さまよう木霊」(毎日放送)は機動隊員の差別発言をきっかけにネット上で広まった「沖縄ヘイト」を扱いつつも、一方でデマを真に受けたメディアのあり方を問う点が話題となった。後者はネット上の発言の真偽を確かめるため追跡取材するなど真摯な制作姿勢が評価され、すんなりと月間賞に。月間賞のさらなる2本は制作者の良心が垣間見える番組である。「大ちゃんと為さん~あるまちの風景~」(三重テレビ)は、ハンセン病をテーマとしながらもその名称を極力用いないなど、細やかな配慮とともに常盤貴子の穏やかな語り口が相まって好評を得た。また、知的・精神障害のある人たちなどが生み出す独創的な作品に光を当てたETV特集「人知れず 表現し続ける者たち」(NHK Eテレ)は、ナレーションの力を借りずに映像と音のみで現実を紡ぎ、創作者に寄り添う温かさを感じさせるとして選定された。このほか、月間賞には届かなかったものの、相対的貧困の子どもにスポットを当てたNHKスペシャル「見えない“貧困”」も評価された。

 ドラマでは、丁寧でリアルな「就活家族」(テレビ朝日)や、ストーリーに回収されない微妙な部分が味わい深い「カルテット」(TBSテレビ)が話題に。着地点がいまだ見えていないが「山田孝之のカンヌ映画祭」(テレビ東京)や、NHKで総合とBSを連動させた編成の「スリル! 赤の章・黒の章」の進展に期待する声も。そのなかで活発な議論が交わされたのは「空想大河ドラマ 小田信夫」(NHK)。資料のないところで話を組み立てる大河とパロディの差異はどこにあるのか、詳しくは太田委員の私評に譲る。

 バラエティ・その他は多くの番組が挙げられたが、たどたどしい英語で目的地を目指す「世界の果てまでイッテQ!」(
日本テレビ)内の企画“出川哲朗のはじめてのおつかい in ニューヨーク”は仕上げの妙が心憎いと好評を博した。このほかマグロ漁を38日間にわたって丹念に追いかけた「追跡! 極上マグロ」(静岡朝日テレビ)や知られざる驚きの仕事にスポットを当てた「こんな仕事があったんだ」(テレビ西日本)など地方制作の番組を推す声も多かった。また森友学園の疑惑を先陣を切って特集した「ゆうがたサテライト」(テレビ東京)も注目された。これについては藤岡委員の私評をGALACにてご覧いただきたい。(鈴木誠一郎)

※『GALAC(ぎゃらく) 5月号』より