森友学園への国有地払い下げ問題にからみ、突然渦中の人になってしまった安倍晋三首相の妻・昭恵氏。後に辞任したとはいえ、同学園が開設を予定していた小学校の「名誉校長」に就任していたというのだから穏やかではない。

『「私」を生きる』はその安倍昭恵氏の著書(2015年11月刊)である。07年に夫が首相職を退いたとき、〈安倍晋三の妻としてより、一人の女性、安倍昭恵としてどう生きるかを考えたい〉と思いはじめたという昭恵氏。東日本大震災の被災地で防潮堤の問題に取り組んだり、山口県の「昭恵農場」でとれた「昭恵米」を自身の居酒屋で出したり、なかなか旺盛な活動ぶりだ。

 でも「家庭内野党」という評判に惑わされてはいけない。

 第一に、この人は教育に相当な関心をもっているということである。夫のアドバイスもあり、ミャンマーで寺子屋(非公立の小中学校)建設にかかわった経験から、外遊の際には〈必ず学校や福祉施設の視察を組み込んでもらっています〉という昭恵氏は、国内の私塾にも高い関心を示す。

 第二に、彼女の教育観は保守政治家のそれと大差ないことだ。福岡のさる私塾で四書五経の素読(そどく)にふれた彼女は感銘を受ける。〈意味はわからなくとも、体が喜んでその言葉を受け入れている実感があって心地がよいのです。/この「素読」を現代によみがえらせることは、主人の提唱する「美しい国づくり」に参画するものでもあるのです〉といい、〈その場で「協力したい」と申し出ました〉。それで発足したのが昭恵氏が名誉会長を務める「鈴蘭会」だった。

 教育勅語の素読にも感動し、森友学園にも積極的に「協力したい」と申し出たんじゃないですかね。現場に足を運び〈彼らの声を主人に、ひいては政治の場に届けるのが私の役割〉と自任する昭恵氏。〈「政治家の妻」はある種の職業〉と自分でいってんだから、首相夫人が「私人」のわけないじゃないの。むしろこれが「女性が輝く社会」に見合った「内助の功」と考えるべきなのよ。

週刊朝日 2016年3月24日号