
昨夏王者や選抜の覇者を筆頭に多士済々のチームがぶつかり合った夏の甲子園。才能がきらり光る球児たちが、この夏も聖地を駆け抜けた。AERA 2025年9月1日号より。





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熱戦が続いた第107回全国高校野球選手権大会は、さまざまな課題が見つかった大会でもあった。
暑さ対策として史上初めて開会式を夕方に開催。試合を午前と夕方に分けて行う2部制が、初めて1日4試合の日にも実施されたが、足をつる選手が続出するなど酷暑の影響を懸念せざるを得ない場面もあった。試合途中のクーリングタイムなど工夫を重ねるが、暑さ対策はまだまだ十分とは言えない。
雨による長時間の中断から、“史上最遅”の試合も生まれた。大会第4日第4試合、綾羽(滋賀)対高知中央は、試合開始が午後7時49分、終了が午後10時46分と、ともに史上最遅。夜間の試合は暑さをしのげる一方で、観客含め帰路をどうするのかなど、まだまだ模索の途中だ。
そして、部内の暴力事案をめぐり広陵(広島)が大会途中に出場を辞退するという事態は大会に影を落とした。高校野球、部活動のあり方を改めて見直すべき出来事だった。
ただ、グラウンドの上では今夏もまた、多くの球児たちが聖地を沸かせてくれた。

2回戦屈指の好カードとなった京都国際対健大高崎(群馬)。健大高崎が世代ナンバーワンとも称される石垣元気(3年)ら豊富な投手陣の継投で戦ったのに対し、京都国際は西村一毅(いっき)が160球の熱投で完投勝利。昨夏の優勝投手の意地を見せた。
昨夏、その京都国際に決勝で敗れた関東第一(東東京)では坂本慎太郎が攻守の中心だった。170センチと小柄ながら、肝の据わった投球に勝負強い打撃と、随所でおたけびをあげながら奮迅の活躍。
ハンディを乗り越え
東洋大姫路(兵庫)の主戦・木下鷹大(ようた)は、3回戦の西日本短大付(福岡)戦でビハインドからマウンドに上がると、6回3分の1を8奪三振と逆転を呼び込む快投を見せ、エースの重責を果たした。
生まれつき左手指が欠損している県岐阜商の横山温大(はると)はハンディをまったく感じさせない鮮やかな活躍。左手は添えるのみの打撃で安打を重ねれば、守備では右手にはめたグラブで捕球すると即座にグラブを外して右手で送球と、見事なプレーを見せた。県岐阜商は公立校で唯一、4強以上に進んだ。
日大三(西東京)の2年生4番・田中諒は初戦で決勝の本塁打。内角寄りの直球を振り抜き、左翼席にたたき込む豪快な一発は、強力打線の核として存在感を発揮した場面だった。
