
なぜ、米価が高騰しているのか。国や農林水産省は、これまで「流通の目詰まり」が原因と説明してきた。農水省は調査を行い、「流通の目詰まりは確認されなかった」と発表。8月5日、石破首相は米価高騰について「生産量の不足」が主因だったと認めた。
【ガチで解説】コメ不足の真相を徹底解説【農水省の長年の説明は的外れだった】
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「悪者扱い」された流通の怒り
つまり、「ブラックボックス」はなかった、ということだ。
「『流通業者は悪玉だ』と信じた客から、『米をため込んで、もうけているんでしょ』と言われたこともあります。なぜ、『申し訳ありませんでした』と謝れないのか」
東京近郊の老舗米店の店主、中村真一さん(仮名)は、憤懣(ふんまん)やるかたないという表情でこう語った。国と世論から一時的にでも“悪者扱い”された流通側の思いは、察するに余りある。
農水省はこれまで米高騰の原因を、米をため込んだ業者による「流通の目詰まり」と説明してきた。小泉進次郎農水相は流通を「ブラックボックス」とまで表現、国に届け出ているすべての米の出荷・販売業者に対して、在庫量の報告を求める調査を行うと発表したのは6月17日のことだ。
調査自体が大きな負荷
「米の収穫は年1回です。われわれ米屋は、年間販売量を予測して、米を仕入れ、次の収穫時期まで在庫を持つ。そのコストは当然かかる。小泉農水相は、そういう仕組みを全く無視して、思いつきで発言しているとしか思えなかった」(中村さん)
調査は米店にとって大きな負荷でもあった。事業者は2023年7月から25年6月末までの仕入れ、在庫、精米、販売、それぞれの量を報告することを求められた。しかも約2週間の短期間でだ。
「おじいちゃん、おばあちゃんが経営している米屋なんて大変ですよ。『提出が任意であれば、俺は出さない』という怒りの声が、同業者からいくつも寄せられました」(同)
調査の結果は…
小泉農水相は7月29日の記者会見で、米高騰の原因を検証するために実施した調査が終わったと明らかにした。
調査結果の詳細は翌30日、有識者による「食料・農業・農村政策審議会食糧部会」で静かに示された。今年6月末時点の米の在庫量(速報値)は、農家、JAなどの集荷業者、小売り・中食・外食業者、いずれも前年並み。つまり、流通の目詰まりは確認されなかったのだ。
「コメの流通、目詰まり確認されず 量が足りず値上がり? 農水省調査」(朝日新聞)
農水省の調査の結果は、各紙が静かに報じた。