
日本以上の速度で少子高齢化が進む韓国。「異常な受験戦争」「貧困に陥る高齢者」「増加する不法滞在者」など、さまざまな問題に直面しています。これは日本にとって対岸の火事ではありません。朝日新聞取材班による『縮む韓国 苦悩のゆくえ 超少子高齢化、移民、一極集中』から一部を抜粋して紹介します。
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「非婚主義」
こんな言葉も韓国では定着しつつある。
自分の考えに基づき、結婚しないことを選ぶ。そんな意味だ。これも価値観の変化の表れと言える。
「非婚主義」の定着を示すような企業の動きもある。一部の大企業では、結婚した社員との間で待遇が不公平にならないように、非婚を決めた社員にも「祝い金」などを贈るところが出始めた。
大手のロッテ百貨店では、「勤続1年以上」などの条件を満たす社員から申請があった場合、結婚の祝い金と同様に50万ウォンと有休5日間を与えるという制度を22年に始めた。「組織内の多様なライフスタイルを尊重する」ことなどが目的だ。
韓国社会への失望から非婚主義へ
「非婚」を決める理由は様々だが、韓国社会のありようへの失望から「非婚主義者」となる人も少なくない。「韓国の男とは恋愛も結婚もしたくない」と言う塾講師の女性(29)もその一人。女性が記者(河野光汰)に話した内容はこうだ。
女性が「非婚主義者」になる決意を固くしたのは、中学生から高校生のころだったと記憶している。
「非婚主義」との言葉が生まれる前の小学4年生ごろ、「独身主義」を自称し始めた。当時は、いわゆる「おてんば」を自称し、勝ち気な性格だった。「そんなことをするとお嫁に行けないよ」と言われるたびに「なんで結婚のために自由を捨てないといけないのか。だったら結婚なんてしたくないと子どもながらに思っていた」と振り返る。
「キムチ女」ネットにあふれる女性軽視
中学生になり、インターネットをよく利用するようになった。ネットの掲示板をのぞくと、「テンジャンニョ(味噌女)」「キムチニョ(キムチ女)」といった造語があふれていた。いずれも経済的に男性に依存する女性を指しており、韓国人女性を卑下するスラングとしてネットの掲示板にあふれている。