キャリア積むほど割を食う

 一方、親戚づきあいが密接な韓国では結婚後、夫の両親と同居する家庭が少なくなく、妻が家事や雑事を押しつけられ「侍女のように扱われる」と嘆くケースも少なくない。女性は自分の母親が義両親のために身を粉にし、悩んできた様子もみてきた。

 経済的に自立した女性が今より少なかったであろう祖母や母親の世代が、結婚して「家庭に入る」のはまだ、理解できる。だが、子どものころからの塾通いの末にいい大学に入り、競争社会でキャリアを積む現代の女性が、結婚したという理由だけで、なぜ家庭内で「侍女」にならなければならないのか。「キャリアを積めば積むほど女性だけが割を食う」。女性はこう思ってしまう。

 かつては、両親から結婚や出産への期待を感じたこともあった。しかし、今は「いい相手もいないし、子どもを育てる自信もない」と非婚主義を両親にも宣言している。

 ただ、母親にだけは「お母さんがあまり幸せそうに見えなかったから」と明かした。母親からは「あなたはお金を稼いでそのまま一人で暮らしなさい」とだけ言われた。「自分の生き方を尊重してくれている」と理解している。

 今の楽しみは、友人と遊んだり、家でユーチューブなどの動画を見たりすること。目標は家を買い、と一緒に暮らすことだ。

 今後の人生設計に、結婚と出産が入る予定はない。

(朝日新聞取材班)

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