芸能人の女性が自死したことを伝えるニュースに「なんできれいな人なのに自死する必要があるんだ」といった外見にフォーカスするようなコメントや、性犯罪事件の記事に「男は性欲があるから仕方がない」「女も喜んでいたんじゃないか」などのコメントがあふれるのを見ては、「あまりにも女性がリスペクトされていない」と不快な思いを抱いてきた。「本当はそうじゃないかもしれない」と前置きしつつ、「あれだけたくさんのコメントを見てしまうと、今自分の目の前にいるこの男性も男尊女卑的な考えを持っているのだと思い始め、(男性を)誰も信じられなくなった」と話す。

結婚とキャリアの両立の困難さ

 女性はさらに、結婚・出産を機に自分のキャリアが絶たれるのではとの「恐怖」も、韓国の女性を非婚主義に走らせている、と指摘する。

 韓国には、「経歴断絶女性」という言葉がある。結婚し、出産と育児を理由に勤めていた会社を離れるなど一時的にキャリアを「断絶」した女性にとって、再び社会でキャリアを追求することが難しい。そのハードルの高さを示す言葉だ。

 自身は誰もが知るソウル市内の有名大学を卒業し、教員免許など複数の資格を取得して塾講師としてキャリアを積んできた。だが、周囲を見渡すと、優秀で順調にキャリアを積んでいた女性が、出産などを機に会社を離れ、その後も復帰がかなわずに夫の収入で生活することで「家庭内での地位も低い」と嘆いている話を聞いたこともある。築いてきたキャリアを手放さなければならない可能性を前に「結婚にキャリアをあきらめる価値があるとは思えない」との考えに至った。

 23年の「ジェンダーギャップ指数」で韓国は146カ国中、105位。ジェンダー格差は引き続き大きい。一方、いまや大学進学率が7割に達し、そこに男女間での大きな差はない。高等教育を受けた女性の社会進出も当たり前で、かつてよりも格差は縮まってきているとの見方が強い。

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