鶏肉はできれば骨つきのものを用意し、塩こしょうとニンニクのすりおろし、ジンジャーパウダー(ショウガのすりおろしでも可) を揉み込んでおく。できれば、2時間程度はこの状態で熟成させておきたい。玉ねぎはくし切りに、ジャガイモとニンジンは少し大きめに、適当なかたちに切っておく。インゲンはスジを取っておく。玉ねぎの量は、肉1に対し0.7程度。そのほかの野菜は、お好みの分量で。

 鍋も、とんがり帽子のタジン鍋がなくても問題ない。土鍋やダッチオーブンなど、鍋に厚みがありふたがしっかりしたもならば、なんでもOK。鍋底にオリーブオイルをまわし入れて火にかけ、準備しておいた鶏肉の表面に焼き目をつける。焼き目が着いたら、いったん取り出しておく。

 鍋底に余ったオリーブオイルにクミンシードとコリアンダーシードを入れて、弱火で油に香りを移し、刻んだ玉ねぎを加えてごく軽く炒める。油をまわした玉ねぎに鶏肉を加え、鍋底で平たくなるようにならし、その上にそのほかの野菜を並べる。放射状に並べると、美しい。

 ターメリックとオリーブオイルを全体にうっすらとまわしがけ、半カップ弱の水を加え、弱火でゆっくりと火を通す。鶏肉がほろほろになるまで煮込み、塩加減を調整すれば完成だ。鍋の形状や大きさにもよるが、1~2時間でできあがる。

 うまみがしみ出たスープにパンを浸しながら食べたいため、米ではなく、パンを用意したい。現地では円盤状に焼かれたパンとともにタジンを食すが、日本でこのパンを探すのは難しい。なので、バゲットや食パンで代用する。

 昨年末、友人夫婦を招き、自宅でタジンを囲んだ。

 肉の一番おいしそうなところを、まず友人に振る舞う。パンが足りなくなれば、黙って差し出す。ゴザの上ではなくテーブルで、手づかみではなくフォークとナイフで食べたタジンだが、タジンを囲む雰囲気は、モロッコや西サハラでの体験を再現できたかなと思っている。

 味もさることながら、もてなし方も含めて、いつかモロッコや西サハラの人に、私のタジンの評価を聞いてみたい。

岩崎有一(いわさき・ゆういち)
1972年生まれ。大学在学中に、フランスから南アフリカまで陸路縦断の旅をした際、アフリカの多様さと懐の深さに感銘を受ける。卒業後、会社員を経てフリーランスに。2005年より武蔵大学社会学部メディア社会学科非常勤講師。ニュースサイトdot.(ドット)にて「築地市場の目利きたち」を連載中