「政策金利が1.5%まで引き上げられて、変動金利が2%を超えてきたとしても、株などで長期分散投資をすれば、その金利負担を上回るリターンが安定して期待できます。日本株でもならせば年平均上昇率は3%以上ですから。政策的にも住宅ローンには減税措置があり、とても優遇されているので “借り得”なのです。加えて、団信という優れた保険まで付いている。残り元本3000万円なら、タダ同然の金利負担で3000万円の死亡保険に加入しているようなものです。これを前倒しして返済し、保障をあえて手放す理由は見当たりません」
米国の代表的な株価指数であるS&P500の直近10年の年平均リターンは14%以上。日銀の利上げが進めば、円高に振れて円換算のリターンは減少する可能性があるが、それでも金利上昇分を上回るリターンは十分に狙える可能性はある。そのため、繰り上げ返済に充当できる資金があるなら、投資で運用するほうがお得というのが塩澤氏の見方だ。
65歳までに完済できるように
ただし、近い将来に収入減が予想される人は、繰り上げ返済も一つの選択肢となり得る。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「完済年齢には気をつけるべき」と話す。
「60歳で定年を迎え、定年延長で65歳まで働くという人が一般的であるように、普通の人は60歳で収入が減り始め、65歳で年金暮らしとなるもの。給与収入が途絶えたあとも住宅ローンを払い続けることになると、健康リスクが高まるなどした際に大きな不安を抱えることになる。その点で、65歳までに完済できるよう、計画的に繰り上げ返済を進めるほうが老後破産のリスクを抑えられると考えます」