今後、いっそう金利が上昇していくことを考えると、「変動から固定金利へ」の借り換え需要も高まりそうだが、前出の塩澤氏は「時期尚早」と話す。
「現状、変動と固定の金利差は1%以上あり、同じ3000万円のローンを組んだ場合の月々の支払額の差は2万円を超えています。この差が縮まるにはあと5回以上の日銀の利上げが必要となりますし、その状態が35年続いて初めて、固定金利のほうが有利と言えます。過去には小泉政権時代の2006年頃に景気が好調で利上げが実施され、その結果、固定に乗り換える人が増えましたが、ご存じのとおり、2008年にリーマンショックが訪れてゼロ金利時代に突入。変動金利がまた下がっていったため、割高な固定金利にする必要がなかったのです。今後、長期的
に変動・固定金利差が0.7%程度に縮小しない限りは、固定に乗り換えるメリットはないでしょう」
今後もさほど縮まらない
市場関係者は先日の参院選の結果にも言及する。
「衆院、参院ともに自公は少数与党に転落したため、野党の顔色をうかがいながらの国会運営が続く。野党が求めてきた消費税減税などの財政出動が拡大していくようなら、財政収支の悪化から日本国債の売り物が増える可能性があります。実際、長期金利は参院選後に1.6%台に載せてきており、さらに上昇するリスクがある。そのため、住宅ローンの変動金利と固定金利の差は今後もさほど縮まらない可能性があります」
では、金利上昇局面の防衛策として、早期完済は有効だろうか? 金利負担が増大する前に身軽になってしまおうと考える人が増えてもおかしくなさそうだが、塩澤氏は「繰り上げ返済は避けるべき」と一蹴する。