
「私のこと、人殺しだと思ってる?」――松たか子が放つその一言に、ゾッとしない人がいるだろうか。阿部サダヲ×松たか子、脚本・大石静という強力な布陣で届けられる木曜ドラマ「しあわせな結婚」(木曜夜9時、テレビ朝日系)。第2話では、結婚生活の甘やかさと、15年前に起きた元婚約者の転落死をめぐる疑惑という相反する空気が混ざり合い、まさに“しあわせ”という言葉の意味を問い直す展開へと突入していった。




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“信じたい”と“疑いたくない”の狭間で
原宿で買った2200円のワンピースに身を包み、幸太郎(阿部サダヲ)の前でご機嫌のネルラ(松たか子)。ごく普通の、愛らしい夫婦同士の風景である。だがその直後、ネルラが真顔になって口にしたのは「私のこと、人殺しだと思ってる?」という衝撃のセリフだった。
さりげなく、だけど確実に心をえぐってくるこのセリフに、幸太郎も視聴者も息をのんだはずだ。事件の真相は藪の中だが、視線の揺れ、言葉の選び方、テンポのズレ。松たか子が演じるネルラは、どこまでも“信じたいけれど信じきれない女”として完璧である。
テレビにも出る人気弁護士として名を馳せる幸太郎は、ネルラが肝心なことを隠していると疑惑を向けながらも、その核心にはなかなか触れられない。夜も眠れず、出演するワイドショーでは代打MCを3日務めて不意にバズり、話題性だけはうなぎ登り。
それでも、幸太郎の心は晴れない。ネルラのことをもっと知りたい。でも、彼女の口から真実を聞くのが怖い。そんな矛盾した感情に苛まれる幸太郎の葛藤が、表情に滲む。代打MCを引き受けた理由を、「せめてあと3日だけ、事件のことを考えずにいたかった」と語る幸太郎。そのセリフが物語るのは、“知ること”と“信じること”の苦しみだ。