山田の打撃スタイルを見ると、左足を高く上げる一本足打法で、下半身の使い方が大きなポイントとなっていることは間違いない。トリプルスリーを達成していた頃はステップする動きに絶妙な“間(ま)”があったが、年々その動きが淡白になっているように見え、緩急を使った攻めや縦に落ちる変化球に対して踏ん張りがきかず、体勢が崩されることも多くなっている。下半身のコンディション不良によって、以前のようなスタイルで成績を残すことが難しくなっていることは間違いないだろう。

 ポジションは違うものの、山田と対照的に見えるのが丸佳浩巨人)だ。

 丸も長打力とスピードを兼ね備えたプレースタイルで長く活躍してきたが、2021年以降は徐々に成績を落とし、今年も開幕から怪我で出遅れている。ただホームランや盗塁数は減っても出塁率は高い数字をキープし続けており、今年もここまで41試合の出場ながら.380をマークしているのだ。タイミングをとる時にバットを下げる動きはあるものの、全体的な動きは小さく、体への負担も小さい打撃スタイルを身につけてきたからこそ、しっかりボールを見極められていると言えそうだ。

 ただ、苦しい状況が続いている山田にも明るい材料があることも確かだ。

 まず今シーズンは成績こそ上がっていないが、一度も登録抹消されることなく一軍に帯同し続けている。またセカンドの守備についても守備範囲は以前よりも狭くなったと言われているが、堅実さは若い頃よりも確実に向上しており、プレーの安定感はまだまだリーグでも屈指の存在と言えるだろう。

 打撃についても7月の数字を見ると3割近い打率を残しており、ツーベース4本、ホームラン1本と長打も多く出ており、盗塁も2つマークしている。これを見ても夏場に来てコンディション面の不安がなくなっている可能性は高そうだ。

 チームは現在セ・リーグで圧倒的な最下位となっており、主砲の村上宗隆もオフのメジャー移籍が既定路線と見られている。若手野手も一軍レベルで安定して長打が期待できる選手はいないだけに、山田がここからさらに調子を上げていくことを期待したい。

(文・西尾典文)

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