
落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「暑い」。
【写真】暑い!「傘差し登下校」として小学生に日傘の利用を推奨する自治体も
天気予報が「今日の北海道の北見は最高気温38度の予想です」と伝えている。
全国で一番暑い予想の北海道の北見。沖縄より暑い予想の北海道の北見。沖縄よ、頼むからもっとしっかりしてくれ、と言いたくなる。
今、京都にいる。京都もとにかく暑い。夏は暑く、冬は寒い。当たり前のことだが京都はまた格別だ。
こんなに暑いのに山んなかで「大」の字に火をつけるってんだから、京都の人の気がしれない。それなりに訳があるんだろうが、「それ、火つけなくても出来んじゃねえの?」と誰か言わなかったのだろうか? やっぱり声が大きい人の意見が通ってしまったのだろうか? 「火じゃなくて大の字に生の八ツ橋を敷き詰めませんか!? 京都っぽく!」なんてトリッキーな意見は出なかったのだろうか? なにも火じゃなくてもいいじゃんか、京都!
そんなことを考えてしまうくらい、とにかく京都は暑い。
西日に側頭部をフルスイングで
昨日の仕事の現場は「京都駅から地下鉄に乗り換えて、丸太町駅から徒歩15分」と言われていた。夕方4時。京都駅からタクシーに乗っちゃおうか、と思っていたがタクシー乗り場が混んでいたので「しゃあない、散歩がてら歩くか」と丸太町駅で降りてスマホを片手に地上に出る。エスカレーターがないくせに、やたらと階段が長い。キャリーバッグを持ち上げて一歩一歩上がるにつれて体感温度も上がっている。
地上に出た瞬間、西日に側頭部をフルスイングでぶん殴られた。膝からガクッと身体が傾いた。地図を見ると近所に「平安女学院」という学校があるが「平成女学園」と空目。これも暑さのせいで許してほしい。
京都の街は碁盤の目。とても歩きやすい。が、この暑さのなか一直線で常に方向が変わらないので、日差しを前頭葉にもろに受けながら歩くことになる。軽いレーザー治療くらいの刺激を感じながら、地図で曲がるべき通りを調べて、その名前の標識を必死で探す。