中日・岡林勇希(日刊スポーツ)
中日・岡林勇希(日刊スポーツ)

「立浪さんは勝たせる監督ではなかったが…」

 中日OBは「立浪さんはチームを勝たせる監督ではなかった。ベンチワークに長けていると言えなかった」と指摘した上で、「育成面と選手の能力を生かす眼力は評価されるべきです。今年の主力メンバーの大半は立浪さんが監督時代に見出した選手たちです」と強調する。

 確かに、立浪前監督の下で飛躍した選手は多い。監督就任1年目の22年に当時高卒3年目だった岡林を外野のレギュラーに抜擢。岡林はこの年、最多安打のタイトルを獲得した。高橋宏斗も高卒2年目の22年に1軍デビューし、19試合登板で6勝7敗、防御率2.47をマーク。24年には12勝4敗とエースに成長し、防御率1.38で最優秀防御率のタイトルを獲った。先発から救援に配置転換された清水達也も22年から3年連続50試合登板と球界を代表するセットアッパーになった。監督就任2年目の23年は現役ドラフトでDeNAから獲得した細川成也、育成ドラフト1位で入団した松山晋也がブレークしている。

 中日を長年取材するライターは、「ドラフト1位で入団した根尾昂や石川昂弥が伸び悩んでいることから育成能力に懐疑的な見方が多いですが、立浪さんの下で1軍に定着した若手は多い。村松開人、福永裕基も結果が出ない時期に我慢強く起用していましたし、梅津晃大にも将来のエース候補として期待を込めていた。3年連続最下位という結果を見ればシビアな評価になるのは致し方ないですが、チームの土台を作った功績は大きい」と評価する。

後に評価された阪神の金本元監督

 低迷期から抜け出すため、チームの改革に乗り出した監督は評価されづらい。かつて、16年から阪神の監督を3年間務めた金本知憲氏も、後になって再評価された指揮官だった。当時の阪神は生え抜きの軸になる選手が少なく、この構造では強さが持続しないことが危惧されていた。金本氏は選手を育てながら勝つ野球を志向し、就任3年目の18年に最下位に低迷した責任を取って辞任したが、坂本誠志郎、青柳晃洋(現フィリーズ傘下)、大山悠輔、才木浩人、糸原健斗、高橋遥人など金本氏が監督を務めた時にドラフトで指名された選手たちがその後にチームの中心選手になっている。

「金本さんが監督に就任しなかったら、FA補強と助っ人に依存したチーム体質からの脱却に時間が掛かったでしょう。生え抜きの選手たちを育てる重要性を体現したことで、チームの方向性が定まり、その後の監督やドラフト戦略に継承されている。もっと評価されるべき監督です」(阪神を取材するスポーツ紙記者)

 中日も立浪前監督の下で力をつけた選手たちがチームの核になっている。ウエスタン・リーグの首位を快走するファームにも楽しみな若手が多い。リーグ優勝は厳しい状況だが、3位以内に躍進すれば選手たちにとって大きな自信になる。CSから日本シリーズに進出する道も見えてくる。

 長い低迷期から脱出した時、立浪前監督の評価が変化しているかもしれない。

(ライター・今川秀悟)

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