「今の3割は10年前なら3割3分超え」

「エース級の投手を打つのは10年くらい前も難しかったけど、当時は先発ローテーションの4、5番手の投手になると球威、変化球のキレが落ちる印象がありました。リリーフもビハインドの展開で出てくる投手は打てる感覚がありましたが、今は違います。大きな変化は球速ですね。敗戦処理と言われる場面でも、出てくる投手の球速が150キロを軽く超える。制球が多少粗くても、スピードボールをきっちりコンタクトするのは難しい。今、打率3割をクリアするのは、10年前なら打率3割3分を超えるのと同じぐらい難易度が高い感覚です」

 「投高打低」が顕著になり、得点力に悩まされるチームが多い。広島は交流戦明けの6月下旬から7月15日まで、16試合連続3得点以下という球団史上66年ぶりの貧打記録を作った。18試合で計35得点と1試合平均得点で2点を下回るようでは苦しい。7月はここまで3勝12敗3分と大失速で5位に転落した。

 借金2の3位で前半戦を折り返した巨人も、主砲・岡本和真を長期離脱で欠いた穴は大きく、リーグ4位の244得点。今月はチーム防御率2.23と投手陣が奮闘しているにもかかわらず、15試合で計30得点と1試合平均2得点と打線が振るわず、5勝9敗1分と負け越している。

得点力不足でファン離れが気がかり…

「あまりにも得点が入らないと、気がかりなのはファン離れです。実際に広島の本拠地・マツダスタジアムは空席が目立ちます。他球団のファンからも『得点が入らないので試合が盛り上がらない』という声がSNS上で少なくない。一朝一夕で解決する問題ではないですが、得点力を上げるために個々の野手のレベルアップが問われると共に、ベンチワークも重要になってきます」(スポーツ紙デスク)

 投高打低のなかでも、セ・リーグ首位の阪神は、いずれもリーグ最多の四球、盗塁、犠打などを駆使して、リーグで唯一300点を超える306得点をあげている。得点シーンはファンも盛り上がる。他球団にも参考になるはずだ。

 後半戦のセ・リーグ各球団の戦い方に変化が生まれるだろうか。首位打者の打率の行方とともに注目したい。

(ライター・今川秀悟)

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