
前半戦を終えて、セ・リーグの打撃成績に異変が起きている。打率トップは岡林勇希(中日)の打率.294で、3割打者が1人もいない。2位以下は小園海斗(広島)、近本光司(阪神)、中野拓夢(同)、佐藤輝明(同)と続くが、いずれも2割9分前後の成績だ。規定打席に少し足りないながら打率が高い“隠れ首位打者”も見当たらない。
プロ野球の歴史で打率3割未満の首位打者は、1リーグ制時代の1942年に打率.286でタイトルを獲得した巨人・呉昌征のみ。1950年に2リーグ制になって以降、首位打者の最低打率は1962年の広島・森永勝治の打率.307で、3割に届かない首位打者はいなかった。だが、今年は2リーグ制初となる2割台の首位打者誕生の可能性が出てきている。
打率を上げにくい1、2番打者
現在打率のトップ争いをしている岡林は中日の1番打者。小園は3番や5番を打つことが多いが、近本と中野は阪神の1、2番打者で、打率上位にリードオフマンが多いのも今年の特徴だ。
「リードオフマンタイプの選手は打数が多いため、打率が上がりにくい。過去の首位打者を見ると、イチローさんは別次元として、1、2番打者が首位打者を獲得するケースは意外に少ない。阪急(現オリックス)の1番打者だった『世界の盗塁王』の福本豊さんも、最多安打に4度輝いていながら、首位打者は一度も獲得していません」(スポーツ紙記者)
近年のセ・リーグの首位打者を見ると、昨年はオースティン(DeNA、打率.316)、2023年が宮崎敏郎(DeNA、打率.326)、22年が村上宗隆(ヤクルト、打率.318)、21年が鈴木誠也(当時広島・現カブス、打率.317)、20年が佐野恵太(DeNA、打率.328)と、いずれもパワーヒッターで、首位打者を獲得した年に本塁打を20本以上打っている。
パワーヒッターやクリーンアップの打者は、四球が多かったり、打数が少なかったりして、安打が比較的少なくても打率が上がりやすい。だが今年は、四球を多く選ぶ選手が少ない傾向もある。