1942年にプロ野球で唯一、2割台で首位打者になった呉昌征。日本統治時代の台湾出身で、巨人、阪神、毎日で活躍した
1942年にプロ野球で唯一、2割台で首位打者になった呉昌征。日本統治時代の台湾出身で、巨人、阪神、毎日で活躍した

投手の制球がよくなり四球も減少

 ここまでセ・リーグトップの四球数は大山悠輔阪神)の41で、シーズンに換算すると65個ペース。近年の四球数が最多だった選手を見ると、昨年は村上宗隆で105、23年は大山で99、22年は村上で118と、100前後の四球を選ぶ打者がいたが、今年は見当たらないのだ。

 セ・リーグ球団の打撃コーチは、四球が減り、打率が下がっている傾向についてこう語る。

「投手の水準はここ数年で一気に上がったと感じます。150キロ以上を超える直球を投げる投手がゴロゴロいて、早めのカウントから仕掛けないと出塁のチャンス下がってしまう。上位打線は球数を投げさせることが重要な役目ですが、制球の良い投手が増えてきているので、なかなか四球でも出塁できません」

 例年は夏場になると、投手に疲労の色が見え始めて打者の調子が上昇する傾向があった。実際に「打者は夏場に成績をあげる」と言われてきた。だが、その流れにも変化が生じているという。パ・リーグ球団のスコアラーが指摘する。

「科学的トレーニングの発達で、夏場になっても体力を落とさず、出力を上げられる投手が増えています。気温の上昇とともに球速を上げていくため、打者がさらに打ちにくくなる。夏場だから打者優位と言えなくなっています」

 クライマックスシリーズ(CS)が導入され、消化試合が減少したことも打者には不利になっている。CSがない時代だったら、今年のように阪神が首位を独走する状況では、他球団は早めに来年以降を見据え、成長途上の若手投手を起用するケースが増えただろう。だが、現在はそのような選択肢は考えられない。今年は2位のDeNAから5位の広島までの4球団が3ゲーム差にひしめく大混戦で、CS圏内に進出するため、後半戦もヒリヒリした戦いが続いていく。

 現場でプレーする打者はどう感じるだろうか。セ・リーグ球団で過去に首位打者のタイトルを獲得した選手はこう語る。

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