そして実際の試合でも疑問に感じる点がある。それは“真っ向勝負”という大義名分によって行われるシーズン中では考えられないストレート一本やりの配球だ。かつて、現在阪神の監督を務めている藤川球児がカブレラに対してストレートを予告して空振り三振を奪ったことはオールスターでの名シーンであるが、これは藤川の持ち味がストレートだから成り立ったことである。公式戦ではない興行だから普段は試せない真っ向勝負をしたいという気持ちも分からなくはないが、その選手の持つ最高の技術で勝負してこそ、ファンは心を打たれるのではないだろうか。
ちなみに1971年のオールスターでは江夏豊(当時・阪神)が9連続三振という偉業を成し遂げており、その時はあらゆるボールを駆使してパ・リーグの強打者を抑え込んだものだった。それと比べると、普段とはかけ離れたストレート勝負での対決は茶番劇と言えるのではないだろうか。
ファンのオールスターに対する注目度も年々低下しており、近年の視聴率は10%を下回っている。以前は普段見られない選手同士の対決ということも注目ポイントだったが、セ・パ交流戦が行われるようになったことで、そういった新鮮さもなくなっていることは間違いない。また選手会からは試合数を減少する要望も出ており、選手にとっても関心は薄くなっている感は否めない。
改善案としては選手の選出方法を見直したうえで、1年に1試合だけの開催とし、会場は12球団のフランチャイズではない球場で行うことを提案したい。選出方法はあまり細かくし過ぎるのも問題だが、その年の成績による対象選手をもう少し絞り、活躍している選手がしっかり選ばれることを重視すべきだろう。またフランチャイズではない球場での開催によって前述したような選手の偏りを防ぐことができ、普段一軍戦を見られない地域のファンにより多くの力のある選手のプレーを見せることで、新たなファンの開拓にも繋がるのではないだろうか。
これはあくまで一つの案ではあるが、現在のオールスターのやり方は見直す点が多いことは確かである。改めてあらゆる点を再考し、より多くのファンと選手が満足するような形での開催になることを望みたい。
(文・西尾典文)
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