玉木雄一郎代表のスタンス
ただ、気になる変化がある。2024年衆院選で躍進した国民民主党を率いる玉木雄一郎代表は、東大卒であり、財務官僚出身であることだ。先に見てきたように、玉木氏は小政党としてテレビや新聞が大きく取りあげてくれない現状を打開しようと、やむにやまれぬものだったとはいえ、「ユーチューバー国会議員」になり、その〝先輩〞であり、政界のアウトサイダーである「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏に近づいた。2024年衆院選では「手取りを増やす」をキャッチフレーズに積極財政を打ち出し、財政規律に配慮する自民党、立憲民主党といった与野党それぞれの第1党と一線を画した。さらに所得税の課税最低ラインを103万円から178万円へと引き上げることなどを公約に掲げ、財務省をやり玉に挙げてきた。玉木氏と二人三脚で党を運営する幹事長の榛葉賀津也氏は街頭演説で「今、永田町、霞が関には、ある宗教がはびこっている。ザイム真理教。やたら税金取る」と述べ、財政規律の門番ともいえる財務省をカルト教団に例えた言葉で批判した(毎日新聞2024年11月28日配信)。
玉木氏が率いる国民民主が、とりわけ「103万円の壁の解消」など、国民の声にならない声を吸い上げ、国政の主要テーマにしたことは評価できるが、与野党の第1党や財務省など既存権益のエリート側を過度に批判したり、選択的夫婦別姓の導入を公約したにもかかわらず、選挙後は慎重姿勢に転じるなど目の前の選挙や政治情勢に合わせて言を翻したりする姿勢に鼻白む思いがするのは筆者だけだろうか。こうしたあり方を踏まえれば、ポピュリズム的な手法だと言われても仕方あるまい。
そこで考え込んでしまう。先に書いたように東大出身、官僚出身の政治家が人気を得られない時代が長く続いてきた。玉木氏はその両方の要素を兼ねそろえながら、高い人気を誇る。とりわけ若年層の支持率は高い。エリートを批判して支持を得るのがポピュリストの特徴の一つだが、自身がエリートである玉木氏がエリートに批判的なスタンスを取り、人気を高めている。
玉木氏は、SNSの登場でポピュリズム政治が進む時代に適合したエリートなのか。それとも、自らがポピュリスト化していることを自覚し、内省しながら砂になった民意に向き合う立ち位置に思い悩んでいるのか……。石破政権の後には、玉木氏を首相候補とする連立政権の構想が与野党それぞれでささやかれる。そうなれば、宮沢氏以来の官僚出身の首相の誕生となる。
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