
生死に関わる情報を徹底して確認
映像に目立つ建物が映っていると、ウクライナ軍の拠点の場所がロシア軍に特定され、攻撃されてしまうのだ。
「窓に映っていた建物が原因でやられたこともあるそうです」
だからこそ、横田さんは自身が撮影した映像については必ず、オンエア前にウクライナ軍のチェックを受けている。テレビ局の編集室からオンラインで軍の担当者と話し合い、必要な箇所にモザイクをかけることもある。
「ウクライナで取材を始めた当初から、そこは徹底してやりました。手間はかかりますが、細かい気配りの有無が彼らの生死に関わってくるので、責任は大きい」
ウクライナとロシアの「ドローン戦争」
ウクライナの戦場は、これまで目にしたどの戦場とも異なるという。
「一言でいうと、『ドローン戦争』です。小銃や大砲で戦うより、ドローンを使うほうが安上がりで確実に攻撃できる。前線ではウクライナとロシア、双方のドローンが飛び交っている」
小銃は射程が短く、目視できる相手しか攻撃できない。大砲は大きくて重量がかさむため、移動が容易でなく、操作にはそれなりの人員を要する。砲弾も貴重だ。一方、ドローンは軽量なうえ、ビルの裏手や穴の中に潜んだ相手も倒すことができる。ドローンを自爆させれば車を吹き飛ばすほどの威力がある。小銃で打ち落とすのは至難の業だという。
「砲弾が落ちてくるのには慣れましたが、ドローンは怖い。ブーンという独特のプロペラ音を耳にしたら、瞬時に身を隠さなければならない。見つかったら、どこまでも追いかけてきますから」
生死の境がごく身近に
最も危険なのが、基地から前線へ車で移動するときだ。ドローンで発見されるのを少しでも防ぐため、兵士は必ず4人1組で1台の車に乗り込み、時速100キロ前後の猛スピードで移動する。
今年3月、たまたま取材許可が出なかった部隊の車両が移動中、ロシア軍の自爆ドローンによる攻撃を受けた。その車両の写真を見せてもらうと、後部座席が激しく破壊されていた。
「取材許可が下りていたら、自分は間違いなくその車両の後部座席に座っていたでしょう。ぼくが取材交渉をした中隊長ら2人が重傷を負い、1人が亡くなった」