
米の価格が上がって久しいが、ようやく落ち着いてきたようにも見える。「令和の米騒動」を通じて、日本の主食、コメに対して、消費者たちはどんな思いを抱いているのか。
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困ったときだけお米に注目
「これまでが安すぎたと思います。『平成の米騒動』というのもあったけど、不足して困ったときにだけお米に注目するというサイクル、いい加減やめたほうがよくないですか?」
こう話すのは神奈川県の学校職員の女性(49)。過去にも米不足を経験したことがありながら米が買えるありがたみをいつの間にか消費者は忘れ、米が高いときだけ騒いでいる、と感じる。
米価の高騰が報じられて久しいが、農林水産省は7月14日、6月30~7月6日に全国のスーパーで売られた米5キロの平均価格は税込み3602円と、前週より70円(1.9%)安く、7週連続で下がったと公表した。
米価がようやく落ち着くかもと、ほっとしている消費者は多いだろう。だが、米は安ければ安いほどいいのか。そんな単純な話ではないのではないか──。そう気づき始めた消費者もまた、少なくないようだ。
冒頭の女性はこうも話す。
「目を覚ますためにも、値上げは受け入れるべきだと考えます」
安すぎれば農家が困窮
神奈川県在住の女性(66)は、夫婦二人暮らし。5キロの米を買えば1カ月は持つ。いまも変わらず、お気に入りの銘柄米「新之助」を買っている。新潟発の高温耐性米で、食味の評価も高い。スーパーでは4千円台後半の値段で見かけることが多い。
「こうした銘柄米は農家さんの開発努力のたまもの。多少高くてもおいしければ買いますし、それが農家の収入に直結することを願っています。米は主食だから安くあるべきというのは、贅沢なんじゃないかな」
米が高すぎれば困る。でも安すぎると、農家が困窮するのではないか。消費者も消費の向こう側の生産者たちの事情に、思いを馳せだしている。
「値上げは受け入れる」という声も
6月中旬、アエラは米に関する読者アンケートを行い、600を超える回答を得た。米価高騰に対する怒りが多いかと思いきや、さまざまな思いが寄せられた。
「高くなりすぎた米は買わない。せめてもの政治に対する抵抗です」(71歳、女性)、「高いブランド米よりも安い備蓄米を購入することが、国民の意思表示だと思う」(61歳、女性)という声がある一方、「今回の騒ぎで、お米の大切さが身に沁みた。間違いなく主食だし、生産者の生活のためであれば値上げは受け入れる」(67歳、男性)という声も複数あった。
農業経済学が専門の西川邦夫・茨城大学教授(42)はこう話す。
「消費者として、安いほうがいいと思うのは仕方ないこと。ただ一方で、知っておいたほうがいいこともあります」