お米は精神的な支えになる
生活史研究家の阿古真理さん(56)は、「お米は、私たち日本人にとって『お米があれば安心』といえるほど精神的な支えになるという意味でも、特別な存在。そこにいまいちど思いを馳せるべきだ」と話す。
「もちろん、外国産米という選択肢もあるでしょう。カリフォルニア米もおいしいと聞きますし、アジア系の料理が好きな人がわざわざバスマティライスを買う例も知っています。選択肢が増えることは否定しませんが、自給率は考えるべきと思います」
アエラのアンケートでは外国産米の輸入について、賛成が27.6%、反対が39.8%、どちらともいえないが28.5%。今後、格安の古米や外国産米が銘柄米とともに市場に出回るようになった場合について、「国産米や外国産米を取り混ぜて購入する」と答えた人は15.2%、「基本は国産米に限って購入する」は55.3%、「基本は多少値が張っても銘柄米のみを購入する」が15.5%だった。いずれも多数派ではないが、それなりに外国産米が受け入れられていることがわかる。
お米はかえがえのないもの
ただ、阿古さんはこう指摘する。
「食糧安全保障の観点からも、自給できる数少ない食糧の一つである米まで自給できなくなって、本当にいいのか。主食の米が手に入らなくなる不安を体感したいまこそ、いまいちど考えるべきだと思います」
政府は7月1日、2025年産からコメを増産する方針を示した。背景には、消費者の声もあっただろう。読者アンケートでも、「今後、安定的な米の供給のために、国内で米を増産すべきと考えますか?」という問いに対し、81%が「増産すべき」と答えた。さらに、主食としてのご飯がかけがえのないものか、という問いには91.4%がそうだと答えている。
「いちばんの楽しみ」は
「今回のことは、この年になってあらためて、『お米問題を何とかせねば』と考えるきっかけになりました」
こう話すのは、東京都内で暮らす89歳の女性。年金暮らしの日々、お茶碗に軽くよそったご飯とほんの少しのおかず。そんな食事がいちばんの楽しみだという。
「戦争中の食糧不足を知る世代ですし、炊き立てのご飯が何よりの御馳走です。『あなたの体はあなたが食べるものでできている』という言葉がありますが、私の体はお米でできているんです。一消費者として、自分事として考えないと。そんな思いを今、かみしめているところです」
米に対する強い意識の萌芽は消費者のなかにすでにあるのかもしれない。
(編集部・小長光哲郎)
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