朱野帰子(あけの・かえるこ)/会社員を経て作家。専業主婦が主人公の『対岸の家事』(講談社文庫)が2025年ドラマ化(写真:本人提供)
朱野帰子(あけの・かえるこ)/会社員を経て作家。専業主婦が主人公の『対岸の家事』(講談社文庫)が2025年ドラマ化(写真:本人提供)
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 家事を題材にしたエンタメ作品が増えつつある。その背景には何があるのか。作品がもたらすものとは。『対岸の家事』などで知られる作家・朱野帰子さんに聞いた。AERA 2025年7月14日号より。

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 最近、家事をテーマにした小説やドラマが出てきています。本屋大賞の『カフネ』は家事代行サービス会社が舞台です。6月から放送のドラマ「ひとりでしにたい」は、優雅だった伯母の孤独死をきっかけに30代独身女性が終活を始めます。翻訳家の村井理子さんが、兄の死後、自宅の処理など怒濤の数日間を描いた『兄の終い』も今年映画化されます。

 専業主婦が減っていく社会で、仕事と両立しなければならない家事が育児だけではなくなってきた。介護がはじまったという人も増えてきて、そっちは独身者にとっても他人事ではない。その危機感がエンターテインメントのテーマとなりはじめているのかもしれません。

 介護で“詰んで”仕事を辞めないように、企業でも介護研修がはじまったという話も聞きます。病院の付き添い、食事の手配、家の整理、不動産の手続きなど、はじまってみたら「こんなにタスクがあるのか」と挫けて離職してしまう人が多いのだと思います。

 育児も介護も一人で抱え込むのは無理がありますよね。けれど仕事のタスク整理と同じ発想で、何が必要で、何の優先順位が高いのかを考えておけば、職場にどんな相談をすればいいのかも見えてくるでしょう。

 けれど、それでも、育児や介護を経験していない人たちに理解してもらうのは大変です。「病院の付き添いに行ってきます」と言っても、その前後にどれだけのタスクがあるのかを想像してもらうのは難しい。「仕事をしていない」と誤解されることもあります。

 家事をテーマにしたエンタメ作品がもっと作られてほしい。「同僚もこれくらい頑張っているんだな」と理解が進むように、援護射撃になるといいなと願っています。

(編集部・井上有紀子)

AERA 2025年7月14日号

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