陰謀論をカットすると「まともな候補者」に見えてしまう
でも、その点では、オールドメディアの記者のほうが、悩みが深いかもしれません。フリーランスのぼくに比べると、新聞やテレビのほうが切り捨てなければならない情報や、無視しなければならない話が多いんです。
テレビ局や新聞社の記者がヘイトスピーチや陰謀論について語る候補者の第一声を取材したとします。番組では、陰謀論の部分をカットして、短く編集した映像を放送する。またはヘイトスピーチばかりでは記事にできないから、紙面に載せられるエピソードだけで記事を書く。
そうすると陰謀論を信じて、差別発言ばかりしていた候補者の記事や映像がまともなことを話しているように見えてしまう場合があるんです。しかも若くて見た目がシュッとしていると爽やかな候補者が組織などの後押しもなくて、1人でがんばっているというイメージがひとり歩きしてしまう。
選挙報道には「記者の主観」が必要だ
だからこそ、いま、選挙報道には、記者の主観が求められていると感じます。公平な報道をどんなに意識したとしても、どうしても記者の主観は入ります。だとしたら、現場で取材した記者が、思いや感想をどんどん署名入りで発信していく。
文句を言われたり、クレームを付けられたりすることもあるでしょう。でも、そこに向き合うのが、言論の自由であり、記者やメディアの責任です。何よりも、それが、壊れかけた日本の選挙を救う方法なのではないでしょうか。
(畠山 理仁:フリーランスライター)
(山川 徹:ノンフィクションライター)
こちらの記事もおすすめ 「あきらめない」山尾志桜里氏の参戦で波乱の東京選挙区 リベンジ出馬は否定も「玉木代表には伝えていません」