共働き家庭が増えても、女性が家事や育児の多くを担っているケースは少なくない。少子化対策として、男性側の働き方や意識を変えることも重要だ。AERA 2023年4月24日号の記事を紹介する。
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「妊娠中は、2人目は2歳差くらいで産んで、その後余裕があれば3人目も産みたいな、なんて思い描いていたけれど、夫の様子を見て絶対に無理だと思いました」
と振り返るのは、名古屋市の建築事務所で働く女性(46)。27歳の時、長女を出産したが、会社員の夫(48)は、帰宅が遅く、出張も多くて不在がち。さらに育児に非協力的で、ウンチのオムツ替えを嫌がり、幼い娘をつれて食事に行くと、自分だけ好きなものを頼んでさっさと食べ、たばこを吸いに行ってしまう。娘の世話を一切手伝おうとしないので、女性がまともに食事を取れないようなことも続いた。実母を早くに亡くしていたこともあり、働きながらワンオペで必死に子育てをしたという。
長女が10歳になり、手が離れたタイミングで、思いがけず長男を妊娠した時、女性は夫にこう宣言したという。
「前回と同じような態度であれば、私は産みません」
ぎょっとした顔をした夫は、長男が生まれて以降は、積極的にオムツを替えるようになり、それなりに努力しているようだったという。
「夫への不満はたくさんあるけど、最初の出産時よりマシだと思うことで、自分を納得させました」
■出生意欲に影響与える
国立社会保障・人口問題研究所の「結婚と出産に関する全国調査」(2021年)によると、「夫婦が理想の数の子どもを持たない理由」は、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という経済的理由が52.6%で最も多かったものの、「これ以上、育児の心理的、肉体的負担に耐えられないから」が23.0%、「夫の家事・育児への協力が得られないから」が11.5%あった。経済的理由は、02年調査の約60%から減少傾向にある中、この2点は20年間、横ばいもしくは増加傾向にある。
少子化問題に詳しい日本総研の藤波匠・上席主任研究員によると、日本では長年、「既婚女性の出生率」が出生数を押し上げる貴重な要因だったが、15年以降は「結婚しているカップルが子どもの数を抑えようとしていることが、少子化が加速している最大の要因です」と指摘する。その上で、藤波研究員はこう話す。