日米の株式相場はすっかり“トランプ関税ショック”前に戻している。6月後半にかけてS&P500指数も最高値を更新し、ダウ平均も4か月ぶりに4万4000ドル台を回復。日経平均株価も5か月ぶりに4万円台を回復した。
証券アナリストの大谷正之氏は次のように解説する。
「大幅な関税の引き上げでインフレが加速し、米国景気が冷え込む可能性が指摘されていましたが、米中貿易戦争はほぼ回避されました。第三次中東戦争に発展するリスクのあったイスラエルーイラン紛争についても、停戦合意で沈静化する兆しが見えています。トランプリスクが発生する以前の状況に戻ったため、相場も元に戻ったかたちです」
適温相場
トランプ関税ショック当初から「一時的な調整にすぎない」と発信してきた野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは「S&P500が最高値を更新してきた背景には、さらに2つの理由がある」と話す。
「1つ目は好調な企業業績です。4月時点では関税発動による業績悪化懸念がありましたが、関税リスクの縮小で5月以降は毎日のように業績見通しの上方修正が発表されています。なかでもマグニフィセント7(グーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディア)が好調で、この7社の4-6月期の業績は15%の増益となる見込みです。2つ目は、利下げ期待。予想されていたよりも米国のインフレ率が鈍化してきていることを受けて、6月以降はFRB(米連邦準備制度理事会)のメンバーから利下げに前向きなハト派発言が増えました」
7月3日に発表された6月の雇用統計は市場予想を上回ったものの、利下げ期待も根強く、3日にS&P500が連日で最高値を更新するなど、足元の米国株式市場は、米景気の底堅さと利下げ期待が併存する“適温相場”の様相を強めているという。