ダラムサラの街並み。正面の建物の2階はカレー屋。建物の左下に設置されたディスプレイにダライ・ラマ14世の姿が映っている=2024年9月19日、金牧功大さん撮影
ダラムサラの街並み。正面の建物の2階はカレー屋。建物の左下に設置されたディスプレイにダライ・ラマ14世の姿が映っている=2024年9月19日、金牧功大さん撮影

2人のダライ・ラマ15世が並び立つ可能性

 いずれの道を歩んでも、「2人のダライ・ラマ15世」が並び立つ恐れはある。中国政府が独自に「ダライ・ラマ」を打ち立てれば、チベット族が暮らす各地域で政情不安が起き、混乱するのではないか。

「抗議運動が起きる可能性は十分あると思います。ただ、長い時間軸で見れば、中国政府にとって『ダライ・ラマをとりにいく』ことには大きなメリットがある。当初、パンチェン・ラマ11世は『偽者だ』と言われましたが、30年たった今では彼の権威を認めるチベット族もいる」(同)

 こうした動きを、米国も静観しているわけではない。昨年5月、米国務省は「チベット側が選んだパンチェン・ラマ11世の所在を明らかにせよ」と中国政府に圧力をかけた。

 トランプ政権は貿易や安全保障の問題で中国に対する警戒感を強めている。今後、チベット問題についても米中は火花を散らせそうだ。

(AERA編集部・米倉昭仁)

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