
中国政府が介入する可能性
中国政府は、ダライ・ラマ14世を「チベットの独立をたくらむ分離主義者」と名指しで批判してきた。それに以上に懸念しているのは「和平演変(わへいえんぺん)」だという。米国がチベットを通じて、平和裏に共産党体制を崩壊させるのではないか、という恐れだ。
もし、パンチェン・ラマ11世と同様に、次の「ダライ・ラマ15世」を中国共産党の意のままに動く人物にできれば、チベット統治は容易になる。
「中国政府がダライ・ラマ15世選びに介入する可能性は高いと考えられます」(金牧さん)
事実、今年7月2日、現世ダライ・ラマが「次のダライ・ラマも輪廻転生によって選ばれるだろう」と述べたことに対して、中国外交部報道官は「ダライ・ラマの転生には中国政府の『承認』が必要」と述べた。
ダライ・ラマ14世も中国を牽制
ダライ・ラマ14世はこれまでも中国政府を牽制するかのように、こう話してきた。
「自分の転生者がこれまでの伝統的な方法で選出されるなら、チベット自治区や中国支配下の地域で私の生まれ変わりはありえない」
生まれ変わりをどう探すのか――。ダライ・ラマ14世自身も幼いころ「亡くなった先代である13世の遺品とそうでないものを前にして、13世が使っていたものを選ぶ」などして、後継者に認定されたと記録されている。だが、こうした方法には意図が入り込む余地が多分にあり、複数の転生者の出現を許しかねない。
「チベットと中国、双方がそれぞれダライ・ラマ15世を選定する、あるいはチベット側が選定した15世を中国政府が国内法に則って承認しない可能性がある」(同)
「ダライ・ラマ14世が存命中に後継者を指名する」「高僧の中から選挙で選ぶのでは」といった報道もある。
「しかし、こうした選定法はかえって中国側に介入の口実を与えかねません。『伝統的な方法で選ばれたダライ・ラマではない。偽者だ』と」(同)。
7月2日の外交部記者会見で報道官は「宗教儀礼と歴史的慣例に倣わなければならない」と発言している。