別の日には、部屋のトイレの便座に尿と便がこびりついているのに気づいた。
ケアマネジャーに日々の介助のプランに便座の清掃を入れてほしいとお願いをすると、介護の日常業務の範囲内であるか確認が必要なため、即答はできないと言う。
「排泄介助のついでに、10秒いや20秒もあれば済むことじゃないですか。便座を拭くだけのことでも、上司の許可が必要なほど難しいことでしょうか」
お尻やリハビリパンツを繰り返し汚さないよう、まずは便座の掃除からではないか、と説明しているうちに、口調がきつくなっていたかもしれない。
それからしばらく経ったある日、施設長に呼び出されて注意を受けた。
「面会時には職員を引き止めないでほしい。長く話すと業務に支障が出る」
そんなに長く話していたつもりはなかった。長いときでも20分ぐらいだったと思う。
さらに数週間後に、「今後のケアプランの見直しについて話がある」と呼び出された。ケアマネジャーと同席した施設長から告げられたのは、サービスの縮小だった。
「介護度の割にケアの頻度が多くて、他の入居者とのバランスや会社の方針もある。夜間の介入回数を減らさせてもらいたい」
これまでも「夜間の転倒が心配なので、見守りの強化を」「居室で独りぼっちなので、可能な限り介入を」などと要望を伝えていた。人手が多いとは言えない施設に細かい要求が多く、手間をかけている自覚はあった。しかし、「サービスを減らす」とまで言われるとは思っていなかった。
「私の小さなカスハラが招いたのだろう。もっと我慢をして、施設に任せていればこんなことにはならなかったのだろう」
父は昨年、亡くなった。高熱を出して救急搬送され、その1カ月後だった。
カスハラを受けやすい立場
介護の現場では、介護される利用者やその家族からスタッフに対する「カスタマーハラスメント」が問題となっている。