
突出した能力を重視するパ、バランスを重視するセ
指名打者制だけでなく、ドラフト戦略にも違いがあるとパ・リーグのスカウトは指摘する。
「パ・リーグは身体能力が高い選手が多い。これは、ドラフトで選手を獲得する際、パワーが凄いとか足の速さが魅力という突出した力を持つ選手であれば、確実性に欠けていたり、守備に難があるなどの弱点があっても指名して、長所を伸ばすことに目を向けて育成する傾向があるからだと思います。一方のセ・リーグは一つの能力に突出するよりはバランスの整った選手をドラフトで指名して育てる傾向がある。中村剛也(西武)、柳田悠岐(ソフトバンク)、万波中世(日本ハム)はパ・リーグを象徴する選手ですよね。入団時は粗削りだったけど、長所を磨く球団の育成方針で大きく飛躍した。彼らがセ・リーグの球団に入団していたら、良さが消えていたかもしれません」
また、選手の指導方法にも違いがあるという。かつてセ・リーグ球団で長年プレーして、現在パ・リーグ球団に在籍する選手は、移籍した際、指導の違いに驚いたという。
「セ・リーグの時は『2ストライクに追い込まれたらコンパクトな打撃で塁に出ることを考えろ』と指導されてきましたが、パ・リーグに移籍してからは『空振りOK。こちらが特別な指示を出さない限り、追い込まれても当てにいくような打撃をしなくていい』と言われました。真逆ですよね。実績がなく、ファームでプレーしている若手の選手たちにもこの指導方針が徹底していました。どちらのアプローチがいいとは言えないのですが、パ・リーグにスケールの大きい選手が多い理由が分かる気がしました。空振りを嫌がると、スイングがどんどん小さくなるんですよね。フルスイングしても打球が飛ばなくなる」