
沖縄戦は決して「沖縄を守るため」の戦いではなく、「天皇制維持」や「本土決戦準備のための時間稼ぎ」という、極めて政治的で戦略的な意図に基づく戦いでした。日本軍は沖縄での勝利は見込めないと認識しながら、住民を戦闘に巻き込み犠牲を出すことを作戦に組み込んでいきました。
一方、アメリカ軍においても、西田議員が述べたような「沖縄を解放する」ことが目的だったわけではありません。アメリカの意図は、沖縄を本土進攻の前進基地とすることにありました。沖縄は、戦略的拠点として必要だったにすぎません。戦後も、アメリカは住民を強制的に排除し沖縄に大規模な基地を維持し、米兵による性被害も相次いでいます。
沖縄戦の実相に迫るためには「なぜ」という問いかけが最も重要です。なぜ民間人まで死を強いられ20万人以上が亡くなったのか、なぜ日本軍は住民に多大の犠牲を生み出した南部撤退を行ったのか。そうした問いかけを通じ、戦争の背後にある構造的問題を理解する必要があります。単なる「継承」や戦争の「怖さ」や「悲惨さ」に共感するだけでは不十分であり、当時の日本国家や行政の在り方、社会の仕組みなどを社会科学的に分析することが大切です。
戦争は「最大の人権侵害の一つ」です。だからこそ、戦争を計画準備し遂行した国家と社会を冷静に分析し、二度と戦争を起こさない仕組みをつくることが必要なのです。
(編集部・野村昌二)
※AERA 2025年6月30日号
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