英国の労働者たちが持っていた「充実した趣味」

 お便りを読んでいると、仕事のことで気持ちが揺さぶられ、もちろん家庭内での役割はこなしつつも、生活を思いきり楽しめない状況なのかなと邪推してしまいます。もし少しでも余裕があれば、次の仕事が多少意にそぐわなかったり、つまらなかったりしたとしても、まぁいいかと思えるくらいの充実した余暇を見つけてみるのはどうでしょうか。もちろん、生活のそれなりに多くの時間を割く仕事が、楽しいものであるに越したことはありません。それでも、ちょっと退屈な仕事をしながらも趣味の音楽を生きがいにしたり、オペラ鑑賞を何よりの楽しみにしたりする生活も、それはそれでありだと思っています。

 それは、私が幼少期の一部を英国で過ごし、当時かの国でワーキングクラスと呼ばれていた労働者たちの多くが実に充実した趣味を持っているのを見たことと関係しているのかもしれません。旧英国的な階級社会が正解だとは思いません。ただ、誰もがスーパーエリートとして働くわけではない世界の中で、ハードだったりくだらないと思えたりする仕事をしながらも人生を生きるに値するものだと思える趣味、パートナー、ラブライフ、遊びや友人関係などを持つことは、仕事に対する気分を変えるのに役立つかもしれないと思うのです。

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