ヤクルトは過去10年を振り返っても日本人選手で規定投球回数をクリアしたのが小川泰弘と石川雅規の2人だけであり、投手が課題と言われ続けてきた。そんなチーム状況もあって過去10年間のドラフト1位は9人が投手となっているが、現在先発として主力と言えるのは吉村貢司郎(2022年1位)しかいない。

 清水昇(2018年1位)と木沢尚文(20年1位)の2人はリリーフとして成功したと言えるが、先発が苦しいチーム事情もあって登板過多となり、今年は大きく成績を落としている。2位と3位まで広げてみても高橋奎二(15年3位)と山野太一(20年2位)くらいしか現在戦力になっている投手はおらず、寺島成輝(16年1位)、梅野雄吾(16年3位)、大下佑馬(17年2位)、蔵本治孝(17年3位)、吉田大喜(19年2位)、杉山晃基(19年3位)、柴田大地(21年3位)と既に退団している選手も非常に多い。

 ルーキーの荘司宏太(2024年3位)がリリーフで活躍しているのは数少ない救いだが、下位指名から現在戦力になっている投手も皆無であり、二軍の成績を見ても目立つのはルーキーの中村優斗(24年1位)と下川隼佑(24年育成3位)だけ。これほど投手が育っていない球団は他にはない。

 投手を優先して上位で多く獲得しながら戦力になっていない影響は野手の方にも出ている。

 過去10年のドラフト1位で唯一の野手である村上は球界を代表する選手となったが、それ以外で過去10年に獲得した野手で規定打席に到達したのは下位指名で入団した塩見(2017年4位)と長岡(19年5位)の2人しかいない。上位で指名した数少ない野手である広岡大志(15年2位)と中山翔太(18年2位)も既に球団を去っている。投手をいくら指名し続けても改善せず、野手の優先度が下がり続けてきた結果が、現在の外国人頼みの打線となっているのだ。

 そもそもチームの大看板となった山田哲人と村上の2人も最初から狙っていたわけではなく、山田は“外れ外れ1位”、村上も“外れ1位”の指名であり、運が味方した部分は大きい。そのこともヤクルトのスカウティングが上手く機能していないことを示していると言えるだろう。

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