一番大きなコンプレックスだった口もとの悩みがなくなったことで、視野が広がった。今でもコンプレックスはあるが、それも含めて自分だと受け入れられるようになった/撮影・上田泰世(写真映像部)

有村藍里はずっと置いてけぼりにしていた

――周りから変化に驚かれませんでしたか。

 幼稚園のころの幼なじみは、「本当に明るくなったね」「めっちゃ変わったね、良かったね」と言ってくれました。

――幼なじみの方もうれしかったんじゃないですか。

 たぶん、幼い頃は人見知りだけど、仲良くなれば一緒に楽しく遊んでいた時期もあったんです。ただ、いろいろなことが重なって、ネガティブが加速していって……。

 その幼なじみはアクティブなタイプで、たとえばディズニーランドに行っても、音楽に合わせて体を揺らしたり、キャラクターに手を振ったりするんです。「藍里もやろうよ」と言われるけど、私はできないタイプで。でも、今は私もキャラクターや船に乗っている人たちに自然に手を振れるようになって、それに驚かれました。

1カ月以上間があくと仲の良い友達にも「人見知り」を発動してしまう。「久しぶりに会うと最初は普段の感じで喋れないというか、ちょっと作ってる自分がいるなって感じです」/撮影・上田泰世(写真映像部)

――本来持っていた性格に戻れたというか、もっと素のままになれたんですね。「本来の姿」でいうと、本名の「有村藍里」として芸能界で生きていくと決めたことでも、見える世界が変わったんじゃないでしょうか。

 病院で名前を呼ばれたときに「テレビに出てるよね?」と看護師さんに言われるようになって、外でもちゃんとしようと思うようになりました(笑)。

 内側の変化でいうと、芸名で活動していたときは、ネガティブな私じゃなくて「新井ゆうこ」という女の子に切り替える感覚がありました。新井ゆうことしてたくさん成長したし、事務所の女の子たちも「ゆうこちゃん」として接してくれるので、ゆうことして生きる時間が長かったんです。

 でも、いざ本名で活動するとなって、「本来の私」を考えたときに、有村藍里はずっと置いてけぼりにしていたんだなと気づいて、もっと大切にしたいと思うようになりました。そうせざるを得ない状況になったから名前を変えることになりましたが、どの選択もすべて前に進むために自分で決断してきました。これからも自分に嘘をつかず、1ミリずつでもいいから、前に進んでいきたいと思っています。

(構成/AERA編集部・福井しほ、撮影/写真映像部・上田泰世)

前向きになれるようなことを一つずつ積み重ねていくことで、「今日の自分ちょっと好きかも」と思えるようになった/撮影・上田泰世(写真映像部)

(構成/AERA編集部・福井しほ)

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