
生みの親と暮らせない子どもが家庭を得る手段として国が普及に力を入れる特別養子縁組。施行から40年近く経ち、養子が自らの出自を知る権利の保障が議論されている。当事者の養子たちも発信を始めた。AERA 2025年6月23日号より。
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日本の養子縁組は長い間、家族の私的な営みとして扱われてきた。特別養子縁組は、成立すると実親との親子関係は断絶し育て親が法的にも唯一の親となる。戸籍には「養子」ではなく「長男」「長女」と記され、血のつながりがないことを伝える「真実告知」をしない親も少なくなかった。
2016年の改正児童福祉法は1947年の制定以降初めて子どもを権利の主体と位置付けた。すべての子どもは適切に養育され、愛され保護される権利を持つこと、実親による養育が困難な場合は里親や養子縁組など家庭養育を優先することが明記され、特別養子縁組は児童福祉の施策と認知されるようになった。そんな社会の変化のもと、自ら発信を始めた当事者たちもいる。
静岡県の会社員、志村歩さん(26)、Yusukeさん(25)ら成人養子が本音で語るYouTube番組「Origin44チャンネル」。時には養親や有識者らをゲストに迎え、養子縁組に関する様々なテーマを扱ってきた。
「生みの親に手紙を書きました。しっかり生きてますという生存確認のようなものです」
「僕は生みの母の名前しか知らないし、今後も直接やりとりすることはないと思う。あえて手紙を書くなら『産んでくれてありがとう』かな」
「親を知る権利」がある、出生情報の一元管理を
ルーツ探しや真実告知など重くなりがちな話題も自然体で語られる。最近特に関心が高かったテーマが「出自を知る権利」だ。弁護士が戸籍や除籍の解説をし、視聴回数は350回を超えた。「特別養子縁組では実親との関係は断絶するので、正当な理由がない限り生み親の戸籍は請求できません。ただ、養子の皆さんには『親を知る権利』がある。私は正当な自己の権利の行使になると思います」。弁護士の言葉に養子たちは神妙な顔をして聴き入った。