控え選手の活躍で巻き返してきたチーム

 ソフトバンクは今年、主力選手に故障が相次ぐ誤算に見舞われた。近藤健介が開幕からわずか3試合で腰痛を発症して登録抹消。4月上旬に手術を受け、1か月半以上戦列を離れた。同じく打線の核を担う柳田悠岐が4月11日のロッテ戦で右すね付近に自打球を直撃させて途中交代。病院で検査を受けて「右脛骨骨挫傷」と診断され、長期離脱となった。開幕5番に抜擢された若手成長株の正木智也も4月中旬に空振りした際、左肩関節を亜脱臼。手術を受けて今季中の復帰が厳しい見通しに。リードオフマンの周東佑京は4月下旬に死球を受けた右膝の状態が芳しくないため、約3週間登録抹消となった。今宮健太も4月下旬に死球を受けて「右前腕屈筋群の筋挫傷」で、5月は1軍を外れ、6月1日に復帰したが、15日に左脇腹の故障で再び登録を抹消された。

 主力の離脱もあってチームは3、4月に9勝15敗2分と大きく負け越し、最下位に低迷した。5月も苦戦が予想されたが、ここから巻き返す。柳町達、野村勇、佐藤直樹やベテランの中村晃、嶺井博希らの活躍により、借金を完済。貯金を5まで積み上げ、首位・日本ハムと3ゲーム差の4位に上がってきた。

「今のソフトバンクを支えているのは昨年まで控えだった選手たちです。開幕2軍スタートだった柳町はリーグトップの打率をマークしていますし、代走要員だった野村は勝負強い打撃で幾度もチームを救っている。ベテランの嶺井の働きぶりも大きい。DeNAからFA移籍した出場機会に恵まれなかったですが、甲斐拓也(巨人)が抜けた今年は好リードで投手陣の良さを引き出している。選手層の厚さを改めて感じますね」(スポーツ紙デスク)

 各ポジションで定位置争いが熾烈なソフトバンクは、実績十分の選手も結果を出せなければ出場機会を失う。

「山川を外せるのは、裏を返せばチーム力がそれだけ底上げされているということです。山川の場合は右の長距離砲として希少価値がありますが、今は一発に頼らなくてもつなぐ野球でリーグトップの得点をたたき出している。FA移籍してきた選手でも結果を出せなければ、定位置を保証されているわけではありません。ただ、山川は一度波に乗ったら、本塁打を量産するので、今後の爆発力に期待したいですね」(ソフトバンクを取材するスポーツ紙記者)

 リーグ連覇に向けて山川の力が必要であることは間違いない。混戦模様のパ・リーグは、交流戦後に熾烈な首位争いが予想される。山川は自分の打撃を取り戻し、優勝を争う戦列に戻ってくることができるだろうか。

(今川秀悟)

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