そしてもう一つの新プログラムである美しいピアノ曲「Wild Side」では、宇野と本田真凜がアイスダンスを披露。競技プログラムさながらの完成度で、観る者を驚かせた。息の合ったツイズルやリフトを目の当たりにして、いつもは冷静を心がける記者席からも感嘆の声が漏れた。

 宇野によれば、去年の10月頃からスケート靴のエッジをアイスダンスのものに変え、練習を積んできたという。

「やってみて分かったんですけど、シングルとアイスダンスでは本当に勝手が違っていて。自分が培ってきたスキルを1割・2割程度しか引き継ぐことができなくて、本当にいろいろなことが難しかった。ただコラボナンバーとしてではなくて、初めてアイスショーをプロデュースするということで、いろいろな新しい挑戦をしたくて。しかも“やってみた”だけではなくて、ちゃんとプログラムとして成立するものをやってみたかった」

「『もっともっと成長できるな』という自信もある一方で、『よく頑張ったな』と思いますし、皆さんの拍手がすごく嬉しかったです、素直に。今日までやってきた練習を、すごく褒められたような気持ちになって」

 観客の反応に力を得たという宇野は、「もっと素晴らしいものを、2人で、このアイスショーで作れたらいいなと思います」と清々しい表情で口にした。

 宇野のアマチュア時代の歩みと、プロとしての挑戦が融合した「Ice Brave」。今しか見られない宇野昌磨の姿が、そこにはあった。(文中敬称略)

(文・沢田聡子)

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