これに対し、80年代の、ここまで触れてきたようなアイドルたちは、甘さだけでなく、文字通り「塩梅」も効かせた味で勝負していたともいえる。どちらが良いということでもないが、今のアイドルはデザート向きで、昔のアイドルは主食としても通用した、ということかもしれない。だからこそ、芸能の中心にいられたわけだ。
90年代は「かわいい」に「セクシー」
それはさておき、ツッパリがダサいものになり、チーマーに取って代わられる頃になると、アイドルも変わらざるを得なくなる。90年代のアイドルが「かわいい」に組み合わせたのは「セクシー」だった。宮沢りえに細川ふみえ、そして飯島直子や飯島愛だ。

なかでも飯島直子は、ヤンキー系芸能人の新たな道を切り開いた。母親が美容院をやっていて、美容師になるつもりだった彼女は、こんなおませな武勇伝を持っている。
「小学校四年生のとき、コンサートに行っておまわりさんに見つかったんです。それが、初めての補導でした」
そのコンサートをやっていたのは、70年代末に女の子を熱狂させたレイジー。ロックとアイドルを融合させたバンドで、ある意味、かわいい&ツッパリの時代を先取りしていた存在だ。
ただ、そんな飯島直子はアイドルではなく、癒やし系タレントとして成功する。そもそも、かわいい&ツッパリに比べると、かわいい&セクシーのギャップ感はいまひとつだ。そのせいか、C.C.ガールズやギリギリガールズなど、ピーク時には100組を超えたというセクシーアイドルグループのブームも短期間で終わった。
その点、80年代のアイドルは今も最強と呼ばれたり、伝説的に語り継がれたりしている。それは、ツッパリという異文化をうまく取り込めたからでもあるのだ。
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