
“転職するなら30~40代まで”とイメージしている人もいるかもしれないが、今50代女性の転職に追い風が吹いている。背景にある企業の女性管理職登用の動きとは。AERA 2025年6月9日号より。
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厚生労働省の雇用動向調査によると、2023年、転職後に賃金アップした人の割合の増加幅は12年と比べ、全世代の中で「55~59歳」の女性が20ポイントで最大だった。この世代の女性は22年も賃金アップした人の割合が48.5%と約半数に上り、近年の飛躍が顕著だ。
転職サービス大手の「doda」でも同様の傾向がみられていて、サービスを利用した50代女性のうち、23年度は半数以上(54.8%)が転職後に年収が増加。22年度と比べ、転職後に年収アップする個人の割合は約10ポイントアップしている。
「今まで注目されてこなかった50代女性にとっても、キャリアによっては転職が有力な選択肢になりつつあります」
そう話すのは、ニッセイ基礎研究所准主任研究員の坊美生子さん。背景にあるのは、企業の女性登用の動きだ。
16年4月施行の女性活躍推進法に始まり、東京証券取引所が21年改正のコーポレートガバナンス・コードで人材登用に多様性を確保するよう求めたり、内閣府令改正によって23年3月期以降、有価証券報告書に女性管理職比率などの開示が義務化されたりと、企業に対する女性登用の圧力は年々高まっている。
26年度に改正される女性活躍推進法では、従業員101人以上の企業に対して、これまで選択項目だった女性管理職比率や男女間賃金格差の公表を義務付ける案が5月に衆議院を通過。今後は中小企業への登用圧力も強まるとみられている。
だが、「企業内では人材不足で、内部登用のみでは数値目標達成が難しく、外部から管理職層の女性を採用しようとする動きが活発化している」というのが坊さんの見立てだ。
役員より少ない部長
厚労省の雇用均等基本調査によると、役職別の女性管理職比率は「役員」の比率が最も高く、23年時点で2割を超えている。対して最も低いのが「部長相当職」で7.9%だ。
坊さんは、こう説明する。
「役員は社外取締役などの形で外部から登用しやすい一方、部長相当職は内部登用できる人材が少ないため、転職市場から候補になりそうな50代のハイキャリア人材を中途採用する動きがあります。しかも人材が少ないこともあって条件のよい求人が集中的に出ているのではないでしょうか」

(編集部・渡辺豪)
※AERA 2025年6月9日号より抜粋
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