沖縄県を初訪問した浩宮さま(天皇陛下)は、ひめゆりの塔を訪れた。ひめゆり同窓会員の宮良ルリさんに、「あなたが書かれた本を読みました」と伝えた=1987年9月19日、同県糸満市

 浩宮さまは、ひめゆりの塔でひめゆり学徒隊の生き残りであった宮良ルリさんに、

「あなたが書かれた本を読みました。豪の中はどうだったのですか」

 そう質問すると、宮良さんはこう口をひらいた。

「みんな、お父さん、お母さん、と叫びながら死んでいきました。『戦争のない時代に生きたかった』、と言って息を引き取りました」

 宮良ルリさんの著書、『私のひめゆり戦記』の中には、命こそ宝を意味する「命(ヌチ)ドゥ宝(タカラ)」という沖縄の言葉が出てくる。

 天皇陛下は、2022年に政府と沖縄県が主催する「沖縄復帰50周年記念式典」にオンラインで出席した際の「おことば」のなかで、

「大戦で多くの尊い命が失われた沖縄において、人々は『ぬちどぅたから』(命こそ宝)の思いを深められたと伺っています」

 と、この言葉に触れた。

 浩宮時代、陛下は豆記者の子どもたちから沖縄について書かれた一冊の本を渡されたことがある。そして陛下は、大学生になった愛子さまに、この本を渡したという。

 平成に入ると、沖縄の豆記者の子どもたちとの交流は、皇太子だった天皇陛下に受け継がれた。お住まいの東宮御所に招き、ご夫妻と愛子さまも一緒に豆記者の子どもたちとバレーボールを楽しんだこともあった。

23歳の誕生日を迎える愛子さま。天皇陛下は、浩宮時代に沖縄の豆記者から贈られた本を、「沖縄の歴史の勉強になる」と大学生になった愛子さまに渡したという=2024年11月22日、皇居、宮内庁提供

 天皇陛下は、「次の世代に戦争の惨禍を引き継いでいきたい」と、側近に伝えたという。

 愛子さまは、今回初めての沖縄訪問となる。前出の山本さんは、愛子さまに沖縄と皇室の「絆」が受け継がれることにほっとした、と感想を漏らし、こう続けた。

「戦争がどれほどの人びとの命を失わせ、むごいものか。沖縄の地を見て、それを感じて、いまの人たちにも伝えていただきたい」

(AERA 編集部・永井貴子)

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